マイクロスコープを用いた根管治療とは、症状のある歯を約30倍にまで拡大するマイクロスコープを用いて、精密に行う根管治療です。

根管治療では、歯の根の中にある、死んでしまった歯の神経を取り除き、消毒して細菌が感染しないように薬を詰め、 神経が死んでしまった後もご自分の歯を長く使っていただくための治療を行います。

歯の寿命は根管治療の精密さで変わります
 ~マイクロスコープの重要性~

根管治療の成功は、治療が精密に行われるかどうかに大きく左右されます。つまり、歯の寿命は根管治療の精密さで決まるとも言えるのです。

歯の治療をしても、繰り返し腫れや痛みが現れ、いつまでも治らずに悩んでいる方が多く当院へ来院されます。

これは、治療を行う医師が自身の経験や勘に頼って治療をはじめ、原因が特定されないまま治療を続行してしまっていることが原因となっている場合が多くあります。

残念ながら、現在の歯科業界では、こうした「医師の勘」によって治療が行われる状況もしばしば見受けられ、医科では当たり前のように使用されるマイクロスコープなどの精密治療設備は、歯科にはまだまだ普及していません。

しかし、当院ではマイクロスコープ(歯科用の顕微鏡)を使って肉眼では見えない部分まで確認し、精密に根管治療を行うことで、患者様により良い治療結果を提供することに成功しています。

歯科用マイクロスコープによる根管治療の4つのメリット

当院では治療精度を最大限に高めるため、通常3~6倍まで拡大することのできる拡大鏡、また24倍まで拡大するマイクロスコープを症例によって使い分け、根管治療など、精密さの求められる治療を行います。

マイクロスコープを使用した根管治療には次の4つのメリットがあります。

1.患部を拡大することで、感覚に頼らない確実な治療が可能

経験則や勘に頼っていては、問題の箇所がよく見えず、治療箇所がずれてしまったり、健康な歯まで余計に削ってしまう可能性も考えられます。

しかし、マイクロスコープを使えば、患部の状態を正確に捉えられるため、患者様へより良い治療結果を提供し、患者様の負担を最小限にとどめることができます。

2.治療の可能性が広がる

これまでは問題の箇所が正確に確認できなかったために行えなかった治療を決行することができるようになり、診断・治療ともに正確に行えるようになります。

治せなかった部分も治せるようになる可能性が高まります。

3.再治療を減少させる

肉眼での治療では見落としや見逃しが発生してしまう可能性がありますが、マイクロスコープを使った治療では無駄な治療・不完全な治療がありません。

マイクロスコープを使うことにより、肉眼では見えない術野の細部まで鮮明に拡大描写します。そのため診療部位の見落としや取り残しがなくなり、より効率の良い歯科診療が行えます。

4.痛みが少なく治りが早い

削るべき箇所を最小限に留めることができるため、健康な歯を最大限に残すことができ、治療の痛みや腫れを抑えることが可能です。

また、傷口も小さいため、治りが早くなることも期待できます。

根管治療が必要な症状

以下は、根管治療が必要となる主な症状の例です。

虫歯が神経に達して激しい痛みが生じる時

虫歯が進行して根管内の神経にまで達した時、「しみる」「痛む」などの症状が現れます。 この痛みを取るため、神経を取り除く治療が必要となります。

根管内の神経が死んでしまった時

歯をぶつけたり、虫歯が進んで神経を侵食すると、根管の中にある神経が死んでしまう場合があります。 死んだ神経は根管内で腐って細菌を発生させ、この細菌が歯の根に到達すると噛んだ時に痛みが出ます。この痛みを取り除くため、死んだ神経を根管治療によって取り除きます。

根管内に膿が溜まった時

死んだ神経をしばらく放っておくと、歯根嚢胞(しこんのうほう)と呼ばれる膿の袋ができます。さらに時間が経過すると、痛みや腫れを引き起こすため、膿を除去するために根管治療を行います。

MTA覆髄治療(歯髄保存治療)

MTA覆髄治療(歯髄保存治療)は、ケイ酸カルシウムを主成分としたMTA(Mineral Trioxide Aggregate)による覆髄治療であり、水酸化カルシウムセメントによる治療と比べて、より多く神経を残すこと(歯髄保存)ができます。

MTA覆髄治療では、歯髄に近接した深い虫歯の治療となるため、歯髄に刺激を与えないように虫歯を取り除いていくことが必要になります。

MTA(Mineral Trioxide Aggregate)は、ケイ酸カルシウムを主成分とする、生体親和性や封鎖性、石灰化促進作用、デンティンブリッジ形成能、細胞反応活性化促進作用、抗菌性に優れた材料。

当院の根管治療の流れ

01

根管内の神経を取り除きます ※マイクロスコープ使用

根管治療では、はじめに痛みの原因となっている神経を取り除く治療を行います。

人によって根管の中に通っている神経の本数は異なりますが、死んだ神経を取り除く時に1本でも見落としてしまうと歯の根の中で神経が腐り、細菌を発生させます。

発生した細菌は再び痛みを引き起こすため、このような場合は再治療しなければなりません。

そのため、当院ではマイクロスコープを用いて、根管内に神経を必ず残さないように注意します。

02

根管内をきれいに洗浄します ※マイクロスコープ使用

歯の中の神経を取り除いたのち、根管内をきれいに洗浄します。

根管内は楕円形や三角形、樋状、二股状というように、とても複雑な形をしています。

そのため、細部まで洗浄を行き届かせるためにファイルという専用器具を用いて根管内を隅々まで精密に殺菌・洗浄していきます。

この時、根管内に細菌を残さないことはもちろんのこと、治療中に細菌が入り込まないように細心の注意を払います。

細菌を根管内に残したまま治療を終了すると、何度も再発を繰り返す恐れがあるためです。

03

洗浄した根管の中に薬を詰めます ※マイクロスコープ使用

根管内の神経を取り除き、細菌が入らないようにしっかり洗浄してきれいになった根管の中に、ガッタパーチャと呼ばれるゴムのような薬を隙間なく詰めていきます。

この時、根管の中に空気が入ってしまうと細菌の住処となり、治療後も再発を繰り返してしまう場合があるため、薬を緊密に詰めるよう注意を払います。

04

レントゲンを撮影して薬がしっかり詰まっているかを確認

洗浄した根管内に薬を詰めれば、「歯の根に空気が入っていないか」「薬の行き届いていない場所はないか」を確認するためレントゲン撮影を行います。

根管の中にまだ空気が残っている場合は再度詰め直し、再発を防止します。

05

治療した歯を詰め物や被せ物で保護します

根管内にしっかりと薬を詰めたことを確認したのち、補綴物(詰め物や被せ物)を使って治療した歯を保護します。

ほんの僅かな歯の欠損であれば小さな詰め物で治療することができますが、神経を取り去って死んだ歯の場合は、長期的に歯の色が黒ずんできたり破折を起こしやすくなります。

これを避けるため、被せ物にはなるべくセラミックやジルコニアのよって保護することをオススメしています。