歯周病とは、お口の中の歯周病菌によって歯を支える歯茎(歯肉)や骨(歯槽骨)が破壊されていく感染症です。
歯と歯茎の境目(歯肉溝)のブラッシングが不十分になると、そこに歯垢が蓄積され、歯肉の辺縁に「炎症」が生じます。
痛みはありませんが、放置していると歯肉溝はどんどん深くなり、歯を支える土台(歯槽骨)が溶け、歯がグラついてきます。
そして最終的には、歯が抜け落ちることもあるのです。
歯周病と全身疾患との関係
歯周病は「サイレント・ディジーズ (静かな病気)」とも呼ばれる病気であり、初期段階に自覚症状があらわれにくいため、気づかれないまま放置されることの多い特徴があります。
そして、気づかずにそのまま放置していると、歯肉は徐々に侵食されていき、全身疾患の引き金になる可能性もあり得るのです。
こうした状況を予防していくためにも、普段からお口の中をケアしていることが重要となります。
歯周病は以下の全身疾患と深い関係性にあることが分かってきています。
糖尿病を悪化させる
歯周病と糖尿病はお互いに悪影響を与えあっています。近年の研究では、歯周病は糖尿病の合併症であることに加えて、歯周病が糖尿病を加速させているということも分かっています。
ただし、これは同時に、歯周病を治療することによって糖尿病を改善することができるということも意味しているため、両方の症状に悩まされている方は早期の歯周病治療が求められます。
低体重児早産の危険性が上がる
妊娠すると、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが体内で多く生成されます(妊娠終期には月経時の10~30倍)。
このエストロゲンは妊娠期に重要な役割を果たすホルモンですが、同時に歯周病菌の増殖を促したり、歯周組織を侵食する働きもあるのです。
そのため、妊娠すると歯肉炎にかかりやすくなります。さらに、妊娠中の女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産の危険性が高くなることも明らかになっています。
これは、歯周病細菌が口内の傷などから体内の血管を巡り、胎盤の胎児へと感染することが原因であると考えられています。
妊婦が歯周病を患っている場合、低体重児早産のリスクは通常時に比べて約7倍まで高まります。妊娠中は特に注意を払い、プラークコントロールを行うことが重要です。
心臓・脳血管疾患のリスクを高める
死に至る可能性もある心筋梗塞や脳梗塞。これらの病気は動脈疾患と呼ばれていますが、歯周病はこうした動脈疾患のリスクを高める要因の1つになり得ることが明らかになっています。
動脈疾患は、血管内に蓄積されるプラーク(脂肪性沈着物)によって血管が塞がることで「血液供給が無くなる」「血管が破裂する」といった症状を引き起こします。
歯周病菌は、動脈硬化を誘導する物質の生成を促すことで、血管内のプラークの蓄積を促進し、血液の通り道を狭くするのです。
動脈疾患予防のためにも、早期の歯周病対策が大切となります。
誤嚥性(ごえんせい)肺炎を引き起こす
誤嚥性(ごえんせい)肺炎とは、食べ物などの異物が誤って肺に入り込んでしまうことで起こる炎症です。
通常、肺には異物が中に入らないように「咳をする」ことで、器官を守る機能があります。
しかし、こうした機能は年齢とともに衰えていき、食べ物などと一緒に口内の細菌が肺の中へ入ってしまうことがあるのです。
誤嚥性肺炎の原因となる細菌は歯周病菌であることが多く、こうした病気の発症を未然に防ぐためにも歯周病の予防・治療が重要となります。
当院での歯周病治療
- プラークコントロール
プラークコントロールとは、虫歯や歯周病を発症させる元となる口内の有害プラークを除去することで、お口の中に無害な細菌グループが支配的になる環境を整える、歯周病のもっとも基本的な治療法です。
- スケーリング・ルートプレーニング
プラークコントロールで口内の状況が徐々に改善してくれば、歯周ポケット付近に付着した歯石や汚れを除去するスケーリング・ルートプレーニングを行います。
これに加えて、正しいブラッシングの方法も指導いたします。歯周ポケットの非常に深い部分に歯石が付着している場合は、歯茎の切開などによって歯石を取り除く必要があります。
- 手術で歯周病を治す
歯周病が進行している場合、歯肉の切開を伴う歯周病治療が必要になるケースがあります。歯茎にメスを入れる目的として主に次の3つが挙げられます。
1.深い歯周ポケットの改善と内部の清掃
2.破壊された骨や歯肉のかたちの改善
3.再発予防のための歯肉の改善
定期検診でしっかり予防を行いましょう
進行した歯周病の治療にはある程度の期間が必要となりますが、歯肉炎の段階(歯肉が炎症を起こしている状態)では定期管理によって状態を改善することが可能です。
ある程度まで症状が悪化してしまっている場合は、出来るだけ早めに診察を受け、早期に治療することが大切です。
歯周病は自覚症状の少ない病気のため、心配な方は一度当院で検査を受け、自身のお口の状態をチェックしてみると良いでしょう。